2023.01.30 ソイルクレド

土壁で都会のビルにうるおいを。

2022年12月に武蔵小山に完成した「かなめのもりのビル」

 

八幡工業では外壁の土壁施工を担当いたしました。

 

営業・斎藤が現場レポートをお伝えします。

 

 

武蔵小山商店街パルムに商業ビル「かなめのもりのビル」が完工し

2022年12月16日に「デコホーム 武蔵小山パルム店」

「成城石井 武蔵小山店」がオープンしました。

 

商店街アーケードの中にある3階建てビルです。

 

敷地面積は約537坪。

ビルの設計は川島範久建築設計事務所(世田谷区)と松井建設(中央区)

外構・屋上緑化は高田造園設計事務所(千葉県)、箱根植木(杉並区)が担当しました。

 

中庭側

一階の軒ひさし部分

ブラウンのところが弊社が施工担当したソイルクレド土壁です。

 

 

二階から屋上階への階段部も同様の仕上げです。

 

アーケードの上から

 

ふたたび 商店街側から

 

左に、生鮮食品のスーパーマーケット

 

右手には、インテリア雑貨のお店です。

 

脇の階段から 二階に上がってみましょう。

 

 

手すり壁が土の左官仕上げとなっています。

直接 触れてみてください。

土壁といってもポロポロ削れたり こぼれたりすることはありません。

 

 

二階と屋上は緑化になっています。

 

同ビルの緑化は人工潅水(かんすい)装置を導入せず、床面に割栗石を敷き詰め、
ワラや落ち葉、炭、燻炭(くんたん)などを使い施工したといいます。

雨水は石や炭などの層を通過することで浄化され、苗木などへ循環する仕組み。

 

 

ビルの裏には1928(昭和3)年に創立したかなめ稲荷神社があったが、

1964(昭和39)年ごろにビルが建ち、一般の方は入れなくなっていました。

 

今回の建て替えを機に、皆さんに参拝してもらえるように整備されました。

 

 

 

鳥居のまわりの盛り土

屋上緑化と同様に

雨水は石や炭などの層を通過することで浄化され、苗木などへ循環する仕組みです。

春になったら 緑の葉が芽吹いて、花々も咲いてきれいでしょう。

 

 

社務所の外壁も、土鏝塗り+掻き落とし仕上げをしました。

 

 

社務所の内部も 土壁。

 

 

さじ鏝で描き落とし仕上げ

 

 

内部の調合は、土と砂(粗目と細目)つのまた のみ。

 

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さて、ここで、今回使用した 材料のご紹介です。

 

 

外壁に使用したのは、「ソイルクレド」

 

八幡工業・株式会社KSAG・材料メーカー 、

3社で共同開発した土壁専用のバインダーです。

製品表記は、【 天然真砂土配合の外壁左官仕上げ材】となっています。

 

 

建設の地盤改良で出土した残土に 、建築用の川砂を調合して

「ソイルクレド」を水で練り合わせ 鏝塗りにちょうどよい硬さに現場で作るのです。

 

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今回、武蔵小山の土は 施工の半年以上前にダンプで倉庫まで運びました。

 

 

運んだ量はおよそ2トン

粘土質が多い地層ですと かなり水分量が高い土です。

 

 

建築現場からの残土にはこんな大きな石が含まれています。

これを取り除き、

耕運機で粘土を切っていきます。

 

 

 

こうして、砂利や不純物を取り除き、転圧・乾燥・ふるいにかけてと・・・

2か月ほどかけて 乾燥させました。

 

八幡工業の 「土壁の作り方」

 

 

長い期間と様々な工程、まさに手間暇をかけて仕上げ資材に再生されました。

 

手塩にかけたサラサラの土の出来上がり。

 

 

完成した土は、20キロで軽量して、どのう袋に 入れ現場に運びます。

 

 

土の材料は、完全受注生産です。

土を運び、数日間乾かし、つぶし、不純物を選別し、ふるいにかけ、

それから骨材などを調合し、さらにテスト施工を行い、ようやく製品となるのです。

 

*これは、試験用サンプル塗りの板です。

 

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さて、現場では、ミキサーにあらかじめ決めた調合で材料を投入します。

さきほどの 「土」そして「砂」

 

そこへ「ソイルクレド」をいれます。

 

あとは、水だけ。

 

バケツに移して、塗り手のもとに 急いで運ばれます。

 

 

RCの壁に下地処理を行ったのち、

土壁をおよそ1センチの厚みに塗っていきます。

 

アーケード側の壁を塗っているところです。

 

壁の下端はRのコテで成型します。

 

乾き具合を見て、一気に描き落としていきます。

この仕上げは翌日というわけにはいきません。

 

 

塗り終わった人から手分けしてみんなで

模様は縦にひきます。

雨水が、土壁を通じて外壁全体にまんべんなく回るように。

 

 

搔き落とし仕上げでは、表面の5ミリ程度の材料が粉のように落ちていきます。

足場の上の段と、下の段では並行して行いますが、おたがいに気を配りながらの作業です。

 

 

足場右手の遮蔽板の外側からは アーケードに流れる音楽やアナウンスなども聞こえます。

ひたすら カリカリとひっかいて仕上げます。

 

 

ちょうどこの辺り 高さ5メートルの壁  👇 を施工していた!! ということです。

 

武蔵小山商店街パルム のアーケードにお越しの際には

少しだけ 視線を上の方に向けてみてください!!

 

土壁施工のブログ、長々と書きました。

お付き合いいただきありがとうございました。

 

最後に、設計・川島範久氏からのメッセージをご紹介します。

 

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屋上はじめ人工地盤上の植樹マウンドや歩行路で行ったことは、

通常の屋上緑化のマニュアルとは根本的に異なります。

 

人工的な緑化資材を一切用いず、ワラ、落ち葉、炭、燻炭、ぐり石、瓦片、伐木剪定枝など、

里山・野山周辺で手に入るもので施工し、人工潅水装置不要の本物の杜空間を作り上げようと試みております。

 

屋上に降り注いだ雨はそのまま二階から地上部へと自然流下します。

 

土中環境に配慮した健全な人工地盤であれば、浄化されて大地に還っていきます。

単なる「緑化」ではなく都心のビルで、自然本来の健全な循環の再生を取り戻し、微気候緩和が可能なこと。

今回の試みの意味はそこにあります。

植樹後ひと月経過して、苗木の生育は良好で、

マルチの藁も屋上の乾いた風に舞い散ることなく、

しっとりとした表土を保っております。

 

 

降雨の後、人工地盤の炭や藁、敷き詰めた石の層を雨水が通過しながら、

樹木の根にの吸い上げと土中の空隙の降下という、

土中で上下の動きを繰り返しながらゆっくりと土壁の壁面を伝って降りていきます。

その過程でも水は浄化されていくのです。

 

雨がやんでもその後数日間、ビルのあちこちできれいな水が滴り続けます。

降雨後数日から一週間にも及ぶ水の動きと保水力を目の当たりにすると、

この環境基盤整備による真夏の冷却効果は相当なものになることがうかがえます。

 

最初に植えた時は主に樹高1.5m以下の苗木でしたが、

6~8年後にはビル全体を木の下に包み込むことでしょう。

 

そうなった時の雨水涵養効果、治水効果、微気候緩和効果を想像すると、

都市緑化の考え方に一石投じる大切な一歩となったかと思います。

 

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